ワークショップ – 現場メンバーに問題解決策を考えてもらう場

皆さまこんにちは。前回から、“to-be(あるべき姿構想)”に入りました。いよいよ“問題解決”する場面です。

前回は、“問題解決のカギは現場にあり!”と書きました。着実に実行される問題解決策を考えるためには、現場のメンバーを巻き込む”ことをお勧めしました。“巻き込む”とは、具体的には“問題解決のアイディアを考えてもらう”ということでしたね。

今回は、その現場メンバーに問題解決策を考えてもらう場である“ワークショップ”について書いていきます。

1. “ワークショップ”とは?

“ワークショップ“はリーンシックスシグマ界隈の問題解決者の方にはお馴染みですが、そうでない問題解決者の方は、意外とご存じないかもしれません。

元々は米GE社で、ジャック・ウェルチ会長時代(1980-90年代頃)に始まった“ワークアウト”に端を発していると思われます。ワークアウトは組織階層の壁、組織間の壁を取り払い、問題解決に関係があるメンバーを集めて、集中討議形式で問題解決を図る手法です。余分な“ワーク(仕事)”を“アウト(取り払う)”するので“ワークアウト”なのですね。これがどういう経緯で“ワークショップ”になったのかはイマイチ不明ですが、今現在では“ワークショップ”の方が一般的だと思います。

で集中討議で何をするのかというと、以前に投稿した“VSM(バリューストリームマッピング)“で現状プロセスとプロセス上の問題点(ムダ)を洗い出し、その問題点(ムダ)を、これも以前に投稿した”フィッシュボーン分析“や”5回のなぜ“で深堀して根本原因を洗い出し、その根本原因に対する解決策を議論する(解決策の議論については、また追って当ブログで書いてみたいと思います)、という流れです。

ワークショップのカバー範囲
図1: ワークショップのカバー範囲

元々は2-3日とか、長い場合ですと丸1週間、関係者を拘束して、集中討議をしていました。ただそれだけの期間、現場の重要メンバーが抜かれるとなると、現場側に中々受け入れられないのですね。短期的に、ワンショットでならアリかもしれませんが、中長期的に問題解決手法として定着させていくとなると、2-3日はおろか1日でも難しいと思います。

今でもそれくらい時間をかけてやるケースもあるかもしれませんが、全般的には時間は短縮傾向にあると思います。最近よく見かけるのが、集中討議ではなく、ある程度フェーズを区切って、毎週1-2時間づつ、何週間かに分けて開催する、といったやり方ですね。

集中討議型のワークショップのもう1つの弊害としては、2-3日とか1週間缶詰になることで“イベント感”がすごく出るのですね。そうするとワークショップが終わると“やりきった感”に溢れてしまい(笑)、その後の問題解決策の実行がおろそかになりがち、ということもあります。その意味でも、時短には賛成です。

2. “ワークショップ”の進め方

それでは実際のワークショップの進め方について、“ワークショップ準備”⇒“ワークショップ実行”⇒“ワークショップ後”の順に、ざっくり書いていきます。

ワークショップ準備

準備段階は、“コンテンツ”、“人関連”、“ロジ廻り”について書いてみます。

コンテンツ

これはワークショップの内容ですね。当然ながら“何のための”ワークショップなのかを明確にする必要があります。そのために“スコープ決め(何の問題を解決するか?)”が大事ですよね。以前投稿した“パレート図”や“SIPOC”等も活用しながら、スコープを決めます。

次にアジェンダを決めます。スコープに基づいて、どんな手法を使って、どんな議論を、何分くらい議論するのか?を決めます。

ワークショップのアジェンダ例
図2: ワークショップのアジェンダ例

人関連

スコープ、アジェンダが決まったら、“誰を巻き込むか”を考えます。以前投稿した“ステークホルダー分析”も参考にしましょう。

参加してもらいたいメンバーが決まったら、直接コンタクトして参加を要請します(場合によっては上司の承諾が必要でしょう)。承諾が得られ次第、会議設定をします。最近はOutlookやGoogleカレンダー等のカレンダーツールが浸透していますので、ここはだいぶ楽だと思います(会社によりけりかもしれませんが)。

ロジ廻り

“ロジ廻り”は“設備・小道具関連”といった感じでしょうか?意味は通じますでしょうか?日本人的には“
ロジ(ロジスティクス)”と聞くと“物流”のイメージが強いですが、会議等で“ロジ廻り”といったら会議で使う施設・設備や小道具関連の準備、を指す場合が多いです。

会議室

サイズは人数に応じて。注意していただきたいのが、椅子に座ってやるというより、壁等に集まって、スタンディングでの議論がメインになりますので、机椅子が片づけられるところを選びましょう。

壁にはポストイットやフリップチャート等をべたべた貼ることになるため、それらが貼れる材質の壁がよいです。最近はガラスでシースルーの会議室もありますが、そこはやめておいた方がよいかと思います。適切な材質の壁がない場合は、ホワイトボードやイーゼルパッドを使う、という手もあります。

外部の施設(貸会議室等)を使う場合には、その手配も抜かりなく!

フリップチャート

もちろんフリップチャートに直接書き込むこともありますが、どちらかというとポストイットをフリップチャート上に貼って、1つ議論が終わったらフリップチャートごとどこかに保存しておく、という使いかたをします。VSMを作る場合等がそうなのですが、VSMの場合横長になります。フリップチャートは縦長の場合が多いと思いますので、横に貼れるようにメンディングテープの準備もお忘れなく!

ホワイトボード

フリップチャートがない場合、代替品になり得ますが、問題なのは、フリップチャートのように、1つ議論が終わったらはがしてどこかに保存しておくことができない点です。スマホで写真を撮って残すという手はありますが、やはりできればフリップチャートの方が便利ですね。

あとは上記の通り、壁にポストイットが貼れない場合に、代わりに貼る場所にする、という使い方もします。

プロジェクター

ポストイット(+フリップチャート、ホワイトボード)で議論する場合には、あまり要らないですが、パソコン上で直接打ち込みながら(例:パワーポイントを使って業務プロセス、VSM等を作りながら)議論する場合には必要です。

最近はZoomやTeams、Google Meet等のオンライン会議ツールで画面共有もできますので、パソコン上で議論する場合でも、プロジェクター無しでもいけそうですね。その場合、あまりフェーストゥフェースで集まってワークショップする意味合いがなくなりそうですが(オンライン・ワークショップは後述)。

ポストイットとマーカー

以前にも投稿しましたが、ポストイットは大きめ(75mm x 127mm程度)のものにしましょう。色は複数あった方がよいです。よく使うのは黄色、ピンク、水色辺り。特にVSMをやる場合には、これらの色が意味を持ちますので気を付けましょう。

そしてマーカーは太目のものです!何も言わないと、細いサインペンやボールペン(笑)!で書く人が出てきますが、それだとワークショップでは見えませんので。あと細かいですが、マーカーの試し書きを事前にしておきましょう。特に新品は、しばらく振ったり押し付けたりしないと出ないものがあるので要注意です。

お菓子、飲み物

頭が疲れてくると糖分が欲しくなるので、ちょっとしたモノを置いておくとメンバーのモチベーションも上がります(笑)。

ワークショップ実行

いよいよワークショップ当日です。皆さまがファシリテーターとなって議論を仕切りましょう!(ファシリテーションについては、また追って当ブログで書いてみたいと思います)

ワークショップのアジェンダ、参加メンバー・人数等によりますが、サブグループに分かれて議論する場合には、サブグループ数分のファシリテーターをアサインしておきましょう。

当日に大事なのは“タイムマネジメント”です。自分で仕切りながらタイムマネジメントもできるのが手っ取り早いですが、誰かに“タイムマネージャー”をお願いしておくのも手です。ファシリテーター自身があまり時間を強調しすぎると“急かしている感”が出て、不快に感じる参加者もいるかもしれませんが、別の“タイムマネージャー”がしれっと“そろそろ時間ですよ!”と言うと、意外と“ああそうだ”みたいになりやすかったりもします(笑)。こういうボケとツッコミ的な役割分担も意外と大事です。

あと大事なのが、“必ずアクションプランを作って終わる”ことです。問題解決策のアイディアは色々出てくると思いますが、アイディアだけではそこから先に進みません。必ず“誰が、何を、いつまでに”やるのかを明確にして合意をとりましょう。“誰が”の部分は、By Nameがよいです。ありがちなのが“営業”とか、部門名を書くことですが、それだと結局お見合いになって誰も何もやらないので、By Nameにしましょう。

アクションプランのイメージ
図3: アクションプランのイメージ

ワークショップ後

ワークショップ後は、アクションプランを実行していきます。ここからは、リーンシックスシグマでいう”Control(維持、管理)”に入っていきます。”Control(維持、管理)”については、また追って当ブログで書いてみたいと思います。

3. “オンライン・ワークショップ”

昨今はコロナ禍の影響で、オンライン会議が急速に定着しましたよね。問題解決の手も休めるわけにはいかず、ワークショップもオンライン開催が増えてきているのではないでしょうか?

ここまではフェーストゥフェースで一か所に集まってやるワークショップの前提で書いてきましたが、最後にオンライン・ワークショップにおけるTipsを幾つか書きたいと思います。

オンライン・ワークショップで大事なのが、参加者のエンゲージメントレベル(議論への入り込み具合)を高める、という点です。

ファシリテーション

アイスブレーク

これはフェーストゥフェースの場合も同様ですが、最初に必ずアイスブレークを入れて、参加者全員が1回は声を出すようにしましょう。あまり普段接点がないメンバーがいる場合には、自己紹介でもいいです。あとはちょっとしたゲームもあります(アイスブレーク用のゲームについては、追って当ブログで書いてみたいと思います→書きました!)。

どんどん指名

ファシリテーターが何か投げかけた時に“シーン”となりがちなのが、オンライン環境です。フェーストゥフェースなら何となく空気感で誰かが話してくれたりしますが、オンラインはそうでない場合が多いです。そのために、ちょっと“間”を感じたら、どんどん指名しましょう。そのためにファシリテーターは手元に参加者メンバー表を置いておくと便利です。

休憩はこまめに

オンラインですと、どうしても集中力の持続時間が限られますし、お菓子を出す訳にもいきません(笑)。1時間に1回程度は休憩を入れるようにしましょう。

ロジ廻り

カメラ

カメラはできるだけOnにしてお互いの顔が見えるようにしましょう。その方が確実にエンゲージメントレベルが上がります。欧米人は躊躇いなくOnにしてくれる文化ですが、日本含むアジア系はなぜかOffにしたがる人が多いです。ネットワークの速度の関係で、という場合は仕方ないですが。

まぁOnOffについては、様々な議論があるようで、中々強制は難しいかもしれませんが、最近は背景を画像に変えることもできるようになってきていますし、できるだけOnにすることをお勧めします。

マイク

ヘッドセットやイヤホンを使いましょう。PCのマイク直でやっている人を時々見かけますが、音質もよくないですし、ノイズも入りますので。ただヘッドセットやイヤホンは嫌だ、という人はオンライン会議用のスピーカーフォンを用意しましょう。これならノイズも気にならないです。

今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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