ブレーンストーミング(ブレスト) – アイディア出しの定番

皆さまこんにちは。前回は問題解決に当たっての超重要“ソフトスキル”である“ファシリテーション”について書きました。今回から数回は、また“to-be(あるべき姿構想)”に戻ります。で、今回はアイディア出しの定番である“ブレーンストーミング(ブレスト)”について書いていきます。

“ブレスト”という言葉自体は殆どの方が知っていると思いますし、実際にやっている方も多いと思います。で、やったことがある方ほど、“中々難しいんだよね”と思われているのではないでしょうか?そこで、ブレストのやり方について、幾つかテクニックをご紹介していきます。

当ブログでは、“現場メンバーに問題解決策を考えてもらう”ことを推奨していますので、ファシリテーターである問題解決者の皆さまは、色々なテクニックを駆使して、アイディア出しを促進する必要がありますよね(もちろん、自分でもいつでもアイディアを出せる状態にはしておいた方がいいですが)。

1. “ブレーンストーミング(ブレスト)”の流れ – “発散”から“収束”へ

これは前回“ファシリテーション“について書いた際に、”また追って書きます“としたところですが、ブレストをする時には、”発散“から”収束“へ、という局面の変化を意識することが大事です。

何を言っているのかというと、そんなにたいそうな話ではなく、”発散“段階でアイディアをたくさん出して、”収束“段階で出てきたアイディアを絞り込みましょう、という話です。で、局面の変化を意識するために、ミーティングのアジェンダの中で、

1. アイディア発散(〇分):〇時〇分~〇時〇分

2. アイディア収束(〇分):〇時〇分~〇時〇分

等と書いてしまうと良いと思います。

2. アイディア“発散”のテクニック

当然ながら、まず“何についてのアイディアを出すのか”を提示する必要があります。何でもよいのですが、ここでは問題解決の流れの中なので、問題の“根本原因”についての解決策についてのアイディア出し、ということになると思います。以前投稿したフィッシュボーン分析(の中のロジックツリー)を流用したイメージを提示します。

根本原因の解決策のブレスト(イメージ図)
図1. 根本原因の解決策のブレスト(イメージ図)

こんな感じで、“それではまず、根本原因ごとに解決策のアイディアを出しましょう!”等と言いつつブレストが始まると思います。ここでポンポンとアイディアが出てくるようなチームであれば、ファシリテーターはそれをどんどんホワボに書いていけば(ないしパワポに打ち込んでいけば)いいですよね。でも、世の中そんなにうまくいかない場合が殆どです(笑)。ここでテクニックを幾つか。

a) サイレントブレーンストーミング

これは参加者にポストイット(とマーカー)を配って、“これから〇分間差し上げますので、各自アイディアをポストイットに書き出してください!”とお願いして、文字通り“静かにブレスト”します。オンラインの場合は、パワポファイルを共有モードにしてパワポ上のポストイット(イメージの箱)をどんどんコピーして書いてもらいます。

こう言われると割と何かしらのアイディアが出てきますので、かなりお薦めのテクニックです。シャイな日本人(笑)でも、割とどんどん出てくると思います。

で、ポストイットを貼りだして共有し、それを眺めながら、更にアイディアを引き出していく感じです。ここで前回“ファシリテーション”で書いた“横に区切る”、“縦に区切る”等も駆使できると思います。ファシリテーターの腕の見せ所ですね。

ちょっとしたTipsとしては、ポストイットに“自分の名前”も小さく書いてもらうことですね。貼りだした時に、どれが誰のアイディアだかわからなくなるので。

b) Crazy 8(クレイジーエイト)

もう1つ、面白いテクニックを。これは参加者に紙を1枚配ります(A4でも、ノートをちぎったものでもなんでもいいです)。で、その紙を8つ折りにしてもらいます。こんな感じです(”ちぎった感”満載ですみません)。

Crazy 8用に8つ折りにした紙
画1. Crazy 8用に8つ折りにした紙

ここからブレストに入ります。ファシリテーターは、“これから1分間差し上げますので、一番上の左上のスペースにアイディアを書いてください!”といって、ストップウォッチで1分間測ります(パソコン上でストップウォッチを表示しても臨場感が出ます!)。

で1分経ったら、“書き終わってなくてもいいので、また1分間で次のアイディアを右上のスペースに書いてください!”と言って、アイディア出ししてもらいます。

こんな感じで左⇒右、上⇒下の順に、順番にスペースを埋めていってもらいます。このように時間を区切って強制されると、“何か出さなきゃ”とスイッチが入ってどんどんアイディアが出る、というやり方です。

Tipsとしては、これは紙で手書きでやった方がよいです。PCだと慣れている人でもそれなりに時間がかかります。1分間だと殴り書き的にアイディアを書きつけられる方がよいので。

オンラインミーティングの場合も、参加者に紙を手元に用意してもらって紙に書いてもらいます。で、当然出てきたものは汚くて読めないと思いますので(笑)、各自共有してもらう時間をとって、ホワボなりパワポに書き出していきます。

こちらの“クレイジーエイト”は面白いんですが、ブレスト慣れしている参加者向けですかね。そうでないメンツの場合は“サイレントブレーンストーミング”の方が無難かもしれません。まぁ、ぜひ試してみてください!

さて、ここまでで、良し悪しは別として(笑)、アイディアがたくさん出てきたと思います。この“良し悪しは別にする”のが“発散”ではとても大事です。ありがちなのが、アイディアを共有し始めると、片っ端から否定したり、評論を始める人が出てくるんですね。そうすると、皆否定されるのは嫌なので黙り込む、という悪循環になります。“発散”の時間では“どんな突飛なアイディア、アホなアイディアでもOK”という心理的安全性を確保することが大事です。そのためには、アイスブレークをやるのも良いと思います。アイスブレークについては、追って当ブログで書いてみたいと思います。

3. アイディア“収束”のテクニック

アイディアをたくさん出すことは大事なのですが、出しっぱなしはよくないです。出てきたアイディアから使えるアイディアを絞り込んで、有効な問題解決策につなげていかないといけません。ということで、アイディアを絞り込むためのテクニックも幾つかご紹介します。

a) アフィニティマッピング(別名:グルーピング、KJ法、等)

ここまでで、たくさんのアイディアがポストイットで出ていると思います。で、“収束”の定番テクニックは、似たアイディア同士をグルーピングするというものです。これはやったことある方が多いかと思います。

似たアイディアをくくるので“アフィニティ(同類)マッピング”と呼ばれます。またそのものズバリ“グルーピング”と呼ばれたり、“KJ法”と言われたりもします。発案者が文化人類学者の川喜田二郎先生なので、”KJ”なのですね。こちらの呼び名で聞いたことがある方も多いかと思います。

b) ペイオフマトリックス

アフィニティマッピングで絞り込んだアイディアを、更に優先順位付けするためのツールが、このペイオフマトリックスです。

縦軸:そのアイディアを実行することによる効果の大きさ

横軸:そのアイディアを実行する難易度(金額の大きさ、技術面、等々)

の2軸のマトリックスを作って、絞り込んだアイディアをマッピングしていきます。効果や難易度が定量化できていれば、一目瞭然にマッピングできると思いますが、そうでない場合は、メンバーでディスカッションしながら、相対的に差をつけていきます。

結果的に、4象限にマッピングできると思います。

①効果:大 x 難易度:低

②効果:大 x 難易度:高

③効果:小 x 難易度:低

④効果:小 x 難易度:高 ①は最優先で実施、④はやる意味が低いので却下。この2つは明確です。で、ペイオフマトリックスの場合は②と③のどちらを優先するのかで議論になりがちです。まぁ結局議論して決めるしかないのですが。

c) PICK(ピック)チャート

もう1つ優先順位付けのためのツールをご紹介します。それが”PICK(ピック)チャート“です。

PICKチャート・イメージ図
図2. PICKチャート・イメージ図

ペイオフマトリックスと同じく“効果の大きさ” x “難易度”の2軸のマトリックスです。違いは何かと言うと、4象限に名前がついています。この4つの頭文字をとって”PICK”チャートなのですね。

①効果:大 x 難易度:低 ⇒ Implement Now(すぐやろう)

②効果:大 x 難易度:高 ⇒ Plan(計画しよう)

③効果:小 x 難易度:低 ⇒ Choose(選んでやろう)

④効果:小 x 難易度:高 ⇒ Kill(やめよう)

ポイントはこれらの名前によって対応の方向性が明確になっていることです。ですので、ペイオフマトリックスでは議論になりがちだった②と③についても、Pickチャートでは③⇒②の順になります。但し③はすべからく実行するのではなく、文字通り“選んで(やる意味があれば)”実行する、ということになります。

はい、ここまでで実行すべき問題解決策が明確になったはずです!

今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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