“業務プロセス分析”と何が違う? – バリューストリームマッピング(VSM)

皆さまこんにちは。前回は“内部調査”で使われる手法の1つである“業務プロセス分析”について書きました。

今回は、またリーンシックスシグマになりますが、リーンシックスシグマの“内部調査”段階である“Measure(測定)”フェーズで使われる手法で、“バリューストリームマッピング(VSM)”について書いてみたいと思います。これはリーンシックスシグマ界隈の問題解決者にとってはお馴染みですが(笑)、そうでない問題解決者の方は聞いたことがないかもしれないですね。

1. “バリューストリームマッピング(VSM)”とは何か?

“バリューストリームマッピング”とは、直訳すると“価値の流れマップ”です。ここでいう価値とは、“顧客にとっての付加価値”という意味合いです。英語で”Value Stream Mapping“なので、略して”VSM”と呼ばれる場合が多いです。

百聞は一見に如かず、どんなものか見てみましょう。

VSM(イメージ図)
図1: VSM(イメージ図) 出所:ウィキペディア

要は“業務プロセス分析”と同じなのですが、幾つか特徴的な要素があります。

要素①:スコープの広さ(顧客含む)

“(顧客までの)価値の流れ”をマッピングするので、顧客と、あと反対側の調達先も書く場合が多いです。レベル感としては、以前投稿した“SIPOC(サイポック)”と同じくらいです。実際に、まずSIPOCを作った後にVSMを書く場合が多いです。

これも考え方次第で、顧客を“社内顧客”と捉えて、もう少し狭いスコープで書くこともできると思いますが、一般的には“社外の顧客”を含めて書く場合が多いです。

要素②:“情報の流れ”と“モノの流れ”

一般的な業務プロセス分析では、“情報の流れ”と“モノの流れ”をあまり厳密に区分しないですが、VSMでは書式が決まっています。上記の図1内の上部が“情報の流れ”で、下部が“モノの流れ”になっています。

その他にも、細かい書式で特徴的なものがあります。

△:在庫

白黒縞の矢印:プッシュ生産

凸凹線(リードタイムラダー):時間。これは前回投稿した“業務プロセス分析”でも書きましたね。

これらの要素を厳密に表す必要がある場合には、これらの書式を踏襲するのが良いと思います。ただ個人的には、問題解決者の視点からすると、細かい書式にこだわるより、業務の流れを洗い出し、どこに問題があるかが分かれば十分ではないかと考えています。こんな感じの”簡易版(下図参照)”で十分かと思います。こうなると、通常の業務プロセス分析との違いはないですね。

VSM簡易版(イメージ図)
図2: VSM簡易版(イメージ図)

黄色のポストイット:プロセスステップ

赤丸:ムダ(下記参照)

ピンクのポストイット:問題点

凸凹線(リードタイムラダー)

この位が議論しやすいのではないかと思います。

2. “7つのムダ” or “8つのムダ“?

先述の通り、VSMは“(顧客までの)価値の流れ”をマップしたものです。VSMにおけるプロセスステップは各々、顧客に対して“価値を付加する活動”であるべきなのですが、もちろんそうでないプロセスステップも含まれるのが普通です。それを“ムダ”と呼びます。

リーンシックスシグマでは、VSMを作って、“ムダ”を洗い出し、できるだけ“ムダ”を減らして、その分顧客への“価値を付加する活動”を増やす、というのが基本的な考え方です。

この“ムダを洗い出す”に当たって、“7つのムダ”というフレームワークがあります。英語の頭文字をとって“Wide Tom(ワイド・トム)”と覚えると覚えやすいです。

Waiting: 手待ちのムダ

Inventory: 在庫のムダ

Defects: 不良をつくるムダ

Excessive Processing: 加工のムダ

Transportation: 運搬のムダ

Over production: つくりすぎのムダ

Motion: 動作のムダ

VSM上で、“どんなムダがあるかな?”と議論する際に、ただ考えるよりも、このフレームワークを念頭に議論すると、抜け漏れなく、効率的に洗い出すことができるので便利です。例えば、こんな風に使えます。

VSM簡易版と7つのムダ(イメージ図)
図3: VSM簡易版と7つのムダ(イメージ図)

リーンの本家、トヨタ生産方式では“7つのムダ”ですが、世の中には“8つのムダ”というのもあります。違いは“7つのムダ”にあと1つ、”Non-utilized talent: 活用されていない人材のムダ“が入ります。これを含めて、英語を並べなおして”DOWN TIME(ダウンタイム)”と言われます。

個人的には、どちらでも覚えやすい方でいいと思います。ムダの種類を特定するよりも、抜け漏れなく、効率的にムダを洗い出すことが大事ですので。

ところで”フレームワーク”を増やすことが問題解決者にとって大事でしたよね。覚えていますか?(”漏れなく、ダブりなく(MECE)”)。

3. VSMの“作り方”のポイント:“ワークショップ形式”で効率良く!

VSMの作り方については、ググるとたくさん出てきますので、1つだけリンクを貼らせていただきます(Lucidchart様記事)。

作り方のポイントは、前回投稿した“業務プロセス分析”と同じく、関係者を集めたワークショップを開催してその場でプロセスを洗い出していく、というやり方が良いと思います(ワークショップについては、追って当ブログで書いてみたいと思います⇒書きました!)。このやり方ですと、その場で“ああでもない、こうでもない”と言いながら、関係者に確認をしつつ進められるので、手戻りが少なく、効率的です!

今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

Sponsored Link