皆さまこんにちは。前回はリーンシックスシグマの“内部調査”段階である“Analyze(分析)”フェーズで使われる手法の1つである“フィッシュボーン分析”について書きました。
今回は、この“Analyze(分析)”フェーズで使われるもう1つの手法である“5回のなぜ”について書いてみたいと思います。
1. “5回のなぜ”とは何か? – “なぜなぜ分析”等とも言われます
“5回のなぜ”は、リーンの本家本元、トヨタ生産方式に端を発しています。その“トヨタ生産方式の父“と言われる大野耐一氏の著書”トヨタ生産方式“にも書かれています。ちなみにこの”トヨタ生産方式“は、リーンの基本コンセプトが簡潔にまとまっているので、(リーンシックスシグマ界隈であるか否かに関わらず)問題解決者の皆さまには、ぜひご一読することをお勧めします。
その名の通り、特定の事象(問題点)に対して、“なぜその事象が起こっているのか?”を問いかけてその要因を探っていきます。で、上記の“トヨタ生産方式”で、なぜを5回繰り返せ、と書いてあるので、“5回のなぜ”として知られています。英語だと“5 why”で通じます。ちなみに国内では”なぜなぜ分析“とも言われます。こっちの方が浸透しているかもしれないですね。
“5回のなぜ”で有名な事例があるので、こちらの動画をご覧ください(1分30秒くらい)。
英語でしたが、何となく伝わりましたでしょうか?簡単に整理すると下記のような流れです。
事象:ジェファーソン記念堂の壁の状態が、悪化している。
なぜ?(1):なぜ壁の状態が悪化しているのか?
→要因 (1):2週間に1回の高圧洗浄の影響で状態が悪化している
なぜ?(2):なぜ2週間に1回も高圧洗浄しないといけないのか?
→要因 (2):鳥のフンがすごい
なぜ?(3):なぜそんなに鳥がいるのか?
→要因 (3):鳥は記念塔のクモを食べている
なぜ?(4):なぜそんなにクモがいるのか?
→要因 (4):クモは記念塔の昆虫を食べている
なぜ?(5):なぜそんなに昆虫がいるのか?
→要因 (5):昆虫は記念塔の夜のライトアップに集まってくる
こんな感じで掘り下げていきます。で、この事例では最後の要因を受けて、夜のライトアップをやめることで問題を解決し、また副産物として、ライトアップをやめることで電気代削減もあったという、何とも美しい事例です。
2. “5回のなぜ”のポイント
“5回のなぜ”には、2つほどポイントがあると個人的には考えています。
“5回のなぜ“ポイント① – 現実的な解決策が考えられる深さで止める
この深堀りを“止める”タイミングが難しいですが、“要因が見つかるたびに解決策を考えてみて、それが現実的などうか?”を議論する感じですね。
例えば、上記のジェファーソン記念堂の例で言うと、1つめの要因“2週間に1回の高圧洗浄の影響で状態が悪化している”に対して、“高圧洗浄の回数を減らす”という解決策にしてしまうと、壁の劣化は遅くなるかもしれませんが、鳥のフン害が増えて、根本的な解決にならないですよね。
逆に深堀りし過ぎてもダメです。例えば上記の例で、5つめの要因“昆虫は記念塔の夜のライトアップに集まってくる”に対して、更に“なぜ昆虫がライトアップに集まってくるのか?”と掘り下げて、“昆虫の習性だから”という要因を導き出しても、手の打ちようがないかと思います。遺伝子操作で習性を変える、とかのアイディアも出てくるかもしれませんが(笑)、現実的ではないですよね。
中々一概には言えないのですが、とにかくやってみるしかないと思います。1つ言えるのは、“5回”にこだわる必要はない、ということです。現実的な解決策が見つかれば何回でもいいのです。
“5回のなぜ”ポイント② – 冷静なファシリテーションが大事
上記のジェファーソン記念堂のビデオでは、流れるように“なぜ”が繰り返され、要因が掘り下げられていましたが、実際にはそんなにうまくいきません(笑)。あの事例も、最終結果をまとめたらああなった、ということで、途中では様々な議論があったのではないか、と推察します。
この“なぜ”という問いかけを繰り返すのは、特に日本人はそうなのかもしれませんが、“問い詰め”感が出て、心苦しいものがあります。そこを冷静に洗い出していくファシリテーションスキルが大事になります(ファシリテーションについては、追ってまた、当ブログで書いてみたいと思います)。
幾つかファシリテーションのアイディアをご紹介すると;
アイディア① – “サイレントブレーンストーミング”の活用
ディスカッションの参加メンバーにポストイットを配って、“なぜ〇〇?”という問いかけに対する要因を書いてもらいます。書き終わったら共有して、どれが良さそうかを皆で議論する、というのを繰り返していけば、“問い詰め”感は減らせると思います。
アイディア② – “1人ブレーンストーミング”の活用
アイディア①の変形ですが、最初の事象から最終要因までの掘り下げを、まずメンバー個々人で個別にやってもらい、それを持ち寄って、どれが良いかを議論します。
これらは一例ですが、皆さまも実際にやってみて、やりやすい形を見つけられるとよいかと思います。
3. “フィッシュボーン分析”と“5回のなぜ”のクロス分析 – でもそれって結局“ロジックツリー”なのでは?!
この“5回のなぜ”と、前回投稿した“フィッシュボーン分析”をクロスして(組み合わせて)使うのも有効です。こちらがクロス分析したイメージです。
前回投稿したフィッシュボーン分析のイメージ図の中の、右下の要因“マニュアルが古い”を、“5回のなぜ”で掘り下げています。こんな感じで併用することで、問題点の要因を漏れなく、かつ適切な深さまで深堀りすることができます。
ここで勘のいい方は、“でもそれって結局ロジックツリーでは?”と思われるかもしれませんが、実はその通りです(笑)。
これも前回投稿したロジックツリーのイメージ図に、上記図1の要素を追加したものです。ロジックツリーそのものですね。
この点は、前回と同じ結論なのですが、好みもあると思いますので、使いやすい方、しっくりくる方を使うので良いと思います!
今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。