皆さまこんにちは。前回は問題解決にあたって“一次調査(独自調査)”をする際の分析手法の1つとして“コンジョイント分析”について書きました。コンジョイント分析は“マーケティング分野の実験計画法”と呼ばれている、と書きましたが、今回はその“実験計画法”について、書いていきたいと思います。
1. “実験計画法”とは?
実験計画法とは、元々は品質管理の分野で使われてきている手法なので、問題解決者界隈ではあまり知られていないかと思います。ただ品質管理といえば“シックスシグマ”で、シックスシグマ方法論の中では、この実験計画法は中心的な存在の1つです。なので、リーンシックスシグマ経験者の中ではご存じの方は多いのではないかと思います。
但しこれがややこしい(笑)!シックスシグマ全般に難解ですが、この実験計画法もご多分にもれず難解です。恐らくこれを正しく理解して、セオリー通りに使用している人は少ないのではないかと思います。セオリー通りにやろうとすると難解なので、当ブログでは実践的なポイントに絞って書いていきます。
2. “実験計画法”の使い方、見方
実験計画法は、冒頭にも書きましたように“コンジョイント分析”と似ている手法です。前回、コンジョイント分析の進め方を大きく“調査設計”段階と“分析”段階に分けると、調査設計段階のポイントは“直交表”、分析段階のポイントは“重回帰分析”と書きましたね。
実験計画法を同じく“調査設計”段階と“分析”段階に分けると、調査設計段階のポイントは“直交表”、分析段階のポイントは“分散分析”、ということになります。
①調査設計段階のポイント – 直交表
これはコンジョイント分析と全く同じなので、前回投稿を見てみてください。
前回も書きましたが、直交表の割り当てにあたっては、“線点図”とか“交互作用”という考え方が出てきます。学術的には大事なところで、この部分にかなりの説明が割かれたりします。交互作用というのは、前回の再掲になりますが、こちらの直交表割付イメージで言うと、“重量”・“バッテリー持ち時間”だけではなく、“重量 x バッテリー持ち時間”という組み合わせ効果がある、ということです。
ただ実際には交互作用が大きくなることはあまりないので、実務的には一旦置いておいてよいと考えます。線点図は、交互作用を考慮して直交表割付を行う場合には大事ですが、こちらも実務的には一旦置いておきましょう。
②分析段階のポイント – 分散分析
“分散”分析というくらいなので分散(日経リサーチ様記事)を分析すると勘違いされがちですが、これは複数のデータ群の平均値に、統計的に優位な差があるか(“たまたま”でないか)を分析する手法です。
実際にどんな分析をするかというと、1つはこのように、属性ごとに、各水準の平均値を比較するものです(図1のデータを使っています)。
また属性ごとに、一番平均の大きい水準から一番平均の小さい水準の差を見ることもあります。
これは前回のコンジョイント分析で出てきたグラフと似ていますね。違いはコンジョイント分析の数値は重回帰分析の結果であるのに対し、こちらは平均の差である、ということです。
次にやるべきは、上記の平均値の差が、統計的優位かどうかを分散分析を使って調べます。分散分析にも、重回帰分析で出てきた”P value(P値)”が出てきます。見方も重回帰分析と同じで、”P値が5%未満かどうか”を見ます。分散分析もエクセルを使ってできます。具体的な分析の進め方はたくさんネットに出ていますので、1つだけリンクを貼らせていただきます(kusunoko-ci-development様記事)。
3. 実験計画法とコンジョイント分析の違い
ここまで見てきたように、両者は直交表を用いる部分は同じで、違いは分析手法、ということになります。
私個人としては、(分散分析で統計的な有意差は見ているものの)平均の差を比べるだけの実験計画法よりは、重回帰分析を用いるコンジョイント分析の方が結果指標(前回・今回の例でいうと“満足度”)に対する説明変数の影響度が図れる(因果関係がわかる)ので、いいかなと思っています。もちろんここは色々な意見があると思いますし、使いやすさ・慣れといった要素もあると思います。統計は”習うより慣れよ”なので、皆さまもぜひ色々試してみてください。
今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。