ナレッジマネジメントのポイント

皆さまこんにちは。前回は“プロジェクトマネジメント” の中で、比較的新しい(といっても登場から20年以上経っていますが)“アジャイル”手法について書きました。

ここ最近、問題解決者の抑えるべきソフトスキルとして“チェンジマネジメント”、“プロジェクトマネジメント”について書いてきましたが、この“ナントカ”マネジメントシリーズの一環として(笑)、今回は“ナレッジマネジメント”について書いてみたいと思います。

1. “ナレッジマネジメント”とは?

さて“ナレッジマネジメント”ですが、コンセプト自体は1990年代後半頃からあるので、聞いたことがある方(そして取り組んだことがある方も)多いのではないかと思います。定義はググるとたくさん出てくるので、参考までに1つだけリンクを貼らせていただきます(日経新聞社様記事)。

イメージとしては、この“SECI(セキ)モデル“の通りで、皆さまが普段何気なく行っている仕事から蓄積されている経験・技術(暗黙知)を、目に見える形(形式知)にして、他者と共有していきましょう、ということです。

ナレッジマネジメントのSECIモデル
図1. ナレッジマネジメントのSECIモデル(出所:日経新聞社様記事)

こう聞くと、とても耳当たりのよい感じです(笑)。“それ、大事だよね”と、ほぼすべての方が賛同されるのではないかと思います。昨今の高齢化社会の到来で、貴重な暗黙知を持った人達がどんどん引退していく中で、これまで以上にナレッジマネジメントが大事な世の中になっていると、個人的には思います。実は当ブログも、このナレッジマネジメントの一環として書いています(手前味噌ですみません)。

2. なぜ“ナレッジマネジメント”はうまくいかないのか?

と、とてもいい感じのナレッジマネジメントですが(笑)、皆さまの廻りを振り返ってみて、ナレッジマネジメントは成功しているでしょうか?想像するに、“使われなくなった共有フォルダ”や、“誰もアクセスしないイントラサイト”等が散乱しているのではないでしょうか?(笑)

なぜそうなってしまうのか?大体、こんな構図ではないでしょうか?

ナレッジマネジメントのよくある構図
図2. ナレッジマネジメントのよくある構図

始める段階では、誰も否定する人はいないので、すぐ決まると思います。問題は“器(共有フォルダやイントラ”から作り始めてしまうところかと思います。この“器”作りは作業としては取っつきやすいですし、“やっている感”も出るのでいいんですね。ただこれだけではナレッジマネジメントは機能しません。

3. “ナレッジマネジメント”のポイント

私のこれまでの経験の中で、1つだけ、とてもうまくいっていたナレッジマネジメントの事例があります。

これは懐かしい“ロータスノーツ!(今は”HCLドミノ”と言うそうです)“のデータベースを使った仕組みでしたが、ノーツデータベースのテンプレートほぼそのままのシンプルは質疑応答データベースで、社員は誰でも質問を書き込むことができました。そうするとほぼ1日以内(長くても数日程度)で回答が返ってくるのですね。これが蓄積されているだけです。なので質疑が増えてくると、当然似たような質問も出てくるので、それは検索すればすぐ分かる訳です。中にはご丁寧に、”その質問なら、ここにやり取りがあります!“とリンクを貼ってくれる方もいたりしました。

器としてはとてもシンプルです。この事例のポイントは“1日以内(長くても数日程度)で回答が返ってくる”という点だと思います。(ほぼ)必ず、そしてタイムリーに回答が返ってくるので、皆“何かあったら、あそこに質問投げておこう”というようになって、どんどん使われるようになった訳です。

ではこの“タイムリーな回答”はどうやっていたのか、というと、“特定の人のボランティアベースの頑張り”でした(笑)。思いっきり“人依存”です。継続性という意味では問題アリかもしれませんが、ナレッジマネジメントの成功のためには、よい“ナレッジマネージャー”が不可欠だと思います(いずれは、AIにとって代わられるのかもしれませんが)。

4. “ナレッジマネージャー”に必要な資質と育成

それでは、“よいナレッジマネージャー”に必要な資質には、どのようなものがありますでしょうか?個人的には、こんな感じで考えています。

ナレッジマネージャーに必要な資質
図3. ナレッジマネージャーに必要な資質

図中の“①暗黙知“については、必ずしもナレッジマネージャー自身が持っている必要はないと思います。もちろん自身で持っていれば最強ですが(笑)、そうでない場合、”誰がその暗黙知を持っているか?“を知っていればよいと思います。

大事なのが②と③で、この2つは必須要件です。まず“②他者への貢献意欲”ですが、これは“教え好き”に近い感じかと思います。皆さまの廻りにも、他者から質問されると喜んで教えてくれるような人が1人2人はいるのではないでしょうか?こういう人が“他者への貢献意欲”が高い人、という定義です。

これは大事なのですが、残念ながら先天的な要素が強く、育成するのは難しいのではないか、と個人的には考えます。なので、こういう人をうまく見つけて、ナレッジマネジメントへのモチベーションを持ってもらうのがよいかと思います。中々見当たらない場合、どう見つけるのか?ということですが、例えば“メールやチャットのレスポンスが早い人“であったり、”SNSでこまめに投稿している人/エンゲージメントが高い人(いいね、してくれたり、コメントくれたりする人)“は素養があるかもしれません。

そして“③GRIT(やり抜く力)”です。いきなり英語ですが“グリット”と読みます。これはペンシルバニア大学のダックワース教授が提唱した考え方です。ダックワース先生のTEDでのプレゼンテーションがありますので、お時間あれば見てみてください(約6分)。英語のプレゼンですが、TED Talkのよいところで、同時翻訳のスクリプトが見れますので、必要に応じて、参考にしてください。

カッコいいプレゼンですよね(笑)!プレゼンテーション演習の素材にしてもよいくらいな感じです。で、ダックワース先生が言われているのは、“グリット”というのは、“長期的な目標に向けた情熱、忍耐力”だということです。そして、この“グリット”は(IQやら容姿その他諸々の要因をさしおいて)社会的成功の1番の要因とする研究成果を取り上げています。

これはまさにナレッジマネジメントにも大事で、ちょっとしたことでも淡々と続けることができないと、“忘却の彼方”へ行ってしまいますよね(笑)。

さて、この“グリット”は育成することができそうで、そのためには“成長マインドセット”が有効そうだ、とダックワース先生は言われています。この“グリット”の育成方法と“成長マインドセット”については、また次回、書いてみたいと思います。

今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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