ご無沙汰しておりました。久しぶりの投稿ですが、今回から“問題解決実践編”に入ります。第一弾として、問題解決の1つとしてありがちなテーマである戦略オプションの検討~意思決定を取り上げます。ビジネススクールのケーススタディを題材に、実際に問題解決手法を活用して、解答を考えてみたいと思います。
ケーススタディは MIT のもので原本はここです。ただ長いので、以下にサマリーしました。ご安心ください笑。ちょっと情報が古い(2008年頃)ので、今読むと違和感があるところがあるかと思いますが、所与のものとさせてください。それでは、まずは読みましょう!
ケーススタディの背景
2004 年の設立から 4 年後、Lucky Air は 1 億 430 万ドルの格安航空会社に成長し、中国のトップの観光地の 1 つである雲南省から国内線を運航しています。 中国の航空業界は厳しく規制されており、新しい航空会社の柔軟性が制限されてきました。 それにもかかわらず、中国の格安航空会社は 11 社で、さらに 2 社が正式な承認待ちです。 Lucky Air は、潜在的な競争激化を予想して、さらなる競争上の優位性を探しています。
選択肢の 1 つは、e コマースに注力することです。 Lucky Air の IT 運用は、中国の航空業界で最も先進的な Web ポータルの 1 つを持っていた海南航空によって支えられています。 確かに、航空会社の電子商取引は中国ではまだ初期段階です。 Lucky Air の幹部は、会社、顧客、および市場にとって何が正しいかを決定する必要があります。
解決すべき課題
ケーススタディのお題はこれです。この手の問題解決プロジェクトを経験された方も多いのではないでしょうか?
1. 雲南 Lucky Air にとってのベストオプションは何ですか?
2. 経営チームはどんな要素を考慮すべきですか?
それでは、以下の内容サマリーを見てください。こういう時はフレームワークで情報整理でしたよね。この手の問題の時は、まずは3Cがいいと思います。
サマリー:顧客
中国の旅客航空
・中国民用航空局は、2020 年までの航空交通量の年平均成長率を 15% と予測しています。
・レジャーでの航空利用が大幅に増えています。新しい格安航空会社の出現により、国内旅行が誰にとっても手頃な価格になりました。
・アナリストは、2013 年までに乗客の 25% が低コスト航空会社を利用し、年間 20% の成長率が予測されると推定しています。
エアライン・チケット販売システム
・中国では、乗客は直接航空会社から、もしくは認可された代理店、またはオンライン販売業者から航空券を購入することができます。
・乗客が航空会社から直接チケットを購入した場合、航空会社は、TravelSky(政府所有のグローバル ディストリビューション システム)に料金を支払わなければなりません。
・認可された代理店からチケットを購入する場合、航空会社は 2%から 15% の手数料を代理店に支払わなければなりません。
・中国では、これまでオフラインの旅行代理店が主要なチケット販売システムでした。 乗客にとって、チケットを送料無しで受け取ることができ、さらに、エージェントとの面談は、質問がある乗客にさらなる安心感を与えました。
中国でのエアライン・Eコマース
・電子商取引部門は、あまり洗練されていません。 トランザクションのセキュリティはしばしば貧弱であり、支払いシステムは高価であるか利用できないため、インターネット ユーザーの 15.8% だけがオンライン購入者です。
・中国のクレジットカード普及率は、米国の90%に対し、4%未満です。また、中国のオンライン旅行市場は比較的小さく, 旅行市場全体の1%未満です。
サマリー:競合
・中国の格安航空会社は 11 社で、さらに 2 社が正式な承認待ちです。
・2 つの最大のプレーヤーは Ctrip と eLong で、合わせてオンライン旅行市場シェアの 75% を占めています。
サマリー:自社
社歴
・Lucky Air は 2004 年に設立されました。2007 年から 2008 年の間に、予測される到着数は 2,100 万人から 2,400 万人以上に増加すると予測されていました。
・政府によって許可されたルートライセンスにより、Lucky Air は雲南省内でほぼ独占状態になり、これらのルートが同社の利益のほとんどに貢献しました。 しかし、Lucky Air は成長するにつれて、州外の目的地との間のフライトを徐々に追加しました。
・Lucky Air は、低コストで高効率の航空会社として自社を位置づけ、サウスウェスト航空モデルを採用していました。※サウスウェスト航空モデルとは:保有機種を1種類にすることで、メンテナンスと運用の複雑さを軽減/混雑を回避し、着陸費用を削減するために、各都市の第二空港を使用、等々
・しかし、約 30% のコスト優位性を達成できる米国やヨーロッパの格安航空会社とは異なり、Lucky Air のコスト構造は、主に政府が課した制約により、業界平均よりも約 5% 低かっただけです。
・Lucky Air の 4 つの最大のコスト構成要素である燃料、着陸料、航空機のリース料、および税金は、運用コストの約 70% を占めており、これらのコストは政府の規制の影響を強く受けています。
Luckyair.net
・Lucky Air の強みの 1 つは、ITです。ITは、親会社の海南航空に依存しています。
・同社のウェブサイト、luckyair.net は、業界で初めてオンライン クレジット カード認証を可能にし、乗客のためのオンライン コミュニティを形成しました。
・Luckyair.net はさまざまなサービスを提供していました。 顧客はオンラインでチケットを購入して払い戻しを行うことができ、他のどこよりも 5% から 20% 安くなります。
・Lucky Air には、コール センターのバックエンド オペレーションがありませんでした。 すべてのトランザクション (検索、予約、支払い、検証) はオンラインでした。 Lucky Air の経営陣にとって、この Web サイトは、海外の航空会社のベスト プラクティスを取り入れ、中国の競争に勝ち続けるための有望な方法のように見えました。
・Lucky Air は、航空券の約 80% を代理店を通じて販売し、残りは2% の手数料を支払い、自社の Web サイトを通じて販売しました。
問題解決!
内容サマリーは以上です。それではいよいよ、問題解決してみましょう!
お題1. 雲南 Lucky Air にとってのベストオプションは何ですか?
このような場合、発散と収束のアプローチが使えます。まず発散としてオプションを幾つか用意して、次いで収束で最適なオプションを選択します。
それではまずオプションを幾つか用意する必要があります。この手の戦略オプションの場合、フレームワークとして4Pを使って考えてみましょう。まず4Pの各Pごとに取り得る要素を洗い出します。例えば、こんな感じです。
Product: “拡大路線継続” or ”雲南省に集中”
Price: “バリュープライス” or “プレミアム価格”
Place: “代理店の割合を増やす” or “Eコマースに集中” or “Eコマース&(ハイエンド向け)コールセンターを作る”
Promotion: “大々的にプロモーションする” or “あまりしない”
次に、これらの要素を組み合わせてオプションを用意します。
お題2. 経営チームはどんな要素を考慮すべきですか?
発散してオプションが出そろったところで、収束に入ります。収束に当たっては以前にペイオフマトリックスやPICKチャートを使う手法をご紹介しましたが、今回は評価軸(クライテリア)を設定する方法を試してみます。このクライテリアが、経営陣が考慮すべき要素に当たります。
クライテリアを考えるのにも、フレームワークが使えます。戦略やITの情報が多く出ているので、“戦略・プロセス・組織・IT”を使ってみましょう(今回は、所与の情報から組織をオペレーションに変えています。このような手法のカスタマイズは柔軟にやりましょう)。
戦略
・顧客の嗜好(低価格航空会社によるレジャー旅行の拡大)
・市場規模・成長率
プロセス&オペレーション
・コスト
・既存のオペレーションの強み(単一機種、単一クラスによる優位)
IT
・既存のITの強み(業界最先端のWeb。親会社のIT部門)
では、上記のクライテリアに基づいて、先ほど作成した各戦略オプションを評価してみましょう。
これらから、“Option1”がベスト!こんな結論になりました。もちろんこれが正解!というものではなく、議論次第で色々な結論になり得ると思います(ビジネススクールはそんなところで、解答そのものよりも、解答を出す過程を重視しています)。
やり方が分かっている人は自分なりのやり方で良いと思います。もしやり方が分からない、という人は、1つの方法として今回書いたやり方を思い出していただけると、“サクサク”問題解決ができると思います!
あと今回はケーススタディなので、情報がある程度揃っていましたが、実際に問題解決する時は、これらの情報を集めるところからやる必要があると思います。その際は、こちらを参考にしてください。
最後に、Lucky Airのその後ですが、結局Option3の既存の方向性踏襲で、路線拡大してきたようです。ただその後のコロナで、親会社の海南航空は破綻してしまったようです。運航は継続するとのことなので、今後に期待したいですね。
今回はこのくらいにさせていただき、また次回以降、続けていきたいと思います。 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。